紅雨/勇魔。/COC/その他

紅雨 一章 2、里冉という忍  

 

「・・・!なんでお前がここにいるんだ・・・里冉・・・!?」
「まあ・・・任務でたまたま?」

庭の塀の上に月を背に足を組んで座るそいつ。ふふっ、と笑う綺麗な顔は昔の面影が残っており、俺はすぐに誰だか認識することができた。若干逆光で見づらいけど。
法雨 里冉(みのり りぜん)。甲賀の法雨家と立花は長年対立しているのだが、訳あってコイツと俺は幼馴染、というか親友・・・?な関係にある。とはいえ、さっき里冉が言ったように「久しぶり」なのだ。かれこれ・・・六年ぶり?すげぇな感動の(?)再会だな。逆光でよく見えないけど。

「な、なあ楽・・・?このにーちゃん・・・?は誰なん・・・?」
「ああ・・・兄ちゃんであってるぜ。まあなんつーか・・・知り合い?多分」
「え、何そのすごいざっくりした紹介。俺らっくんの記憶にその程度しか残ってないの??」
「んなわけねぇだろ。・・・つかなんか雰囲気変わったなお前」
「そう?まあ何年も経ってるからねぇ」
「・・・にしても変わりすぎじゃ」
「そんなに??」

だって・・・・昔のコイツは大人しくてあまり口数が多いほうではなかったし・・・なによりなんか・・・目の前のコイツから溢れ出てるこれは何だ・・・?色気・・・と自信・・・?
つか背も更に伸びてるし、髪もか。声変わりしてるううううわああ(俺変わってもたいして変わらなかったとか言えない)
コイツなんでこんなに・・・世間一般で言う「美男」とやらになってんだ・・・うわなんだこの敗北感・・・。


「あははっ、何まじまじと見つめちゃって・・・照れるなぁ」
「な・・・別に見てねぇし・・・」
「らっくんは変わらずツンデレだねぇ。かーわいい」
「あの・・・楽さんこの方本当に何者なんですか・・・」
「法雨 里冉。甲賀の忍」
「あの、らっくん??サラッと素性バラすのやめてくれるかな??一応俺ここめっちゃアウェーなんだからね??ていうか見つかったらやばいんだけどね???」
「ああ、大丈夫こいつら大人達に言うようなやつじゃないし。それとももう名前で呼んじゃってんのに偽名教えろと?」
「・・・・それもそうだね、らっくんがそう言うならいっか」

里冉は音をたてず地面へと降りてきて、俺の横に立つ。やっぱ結構身長伸びてるな・・・。

「はじめまして、お二人さん。甲賀の回し者であることに違いはないんだけど、別に君達のこと敵だと思ってるわけじゃないから安心してね」
「安心できひん・・・・・笑顔怪しすぎる・・・・・・こわ」
「生意気関西弁ショタか・・・・かわいいな」
「なんか言ったか里冉?」
「ん?何も?」
「まぁいいや、紹介するぜ。こいつらは優と岳火。がくは俺のはとこ」
「通りでかわいいと思った・・・ふふ、よろしくね」
「なんやこの変態さん」
「変態って・・・ふっ、くく・・・っ」
「ちょ、らっくん何笑ってんの!?」

 

里冉との出会いは俺が7歳のときだった。
里冉が初任務だったか修行だったかで伊賀で迷子になったところを、たまたま近くで修行していた俺が助けるという、なんか漫画でよくみるような出会いだった。
…実をいうと、俺は初めて会ったとき里冉のことを「女」だと思っていた。
さっき言った通り、線が細く美人な里冉は今でこそ背もでかくなって男らしい体格になってはいるが、幼少期、それこそ出会ったころの里冉は見た目だけならただの美少女だったのだ。それに加え声変わり前の高めの声、一人称もどっちか分かりづらい「僕」、おとなしくて笑うと可愛くて泣き虫で。疑いもしなかった。本人も何も言わないし。そう、このせいなんだ。あいつ俺が女だって思ってること知ってて女のフリしてたんだ。だから気付くのにあんなにかかっ…まあいいやこの話は。
助けたことに下心があったかと聞かれれば「無いと言えばうそになる」ぐらいの感じだ。当時は俺も子供だったしとりあえずなんかすげぇ美少女が困ってるから助けなきゃ、みたいなもんだった。
それがキッカケで仲良くなり、男だと知り余計近い存在になり、親達に内緒で毎日の様にある場所で待ち合わせをして会っていた。
今思うとあの頻度で会うのって相当仲良くないと無理だよな。変なの。
里冉が法雨家の人間だと知ったのは、男だと知ってから更にあとのことだ。
法雨家のことは親父からよく話を聞いていたし、あったこともないのに勝手に敵視していた。その法雨の跡継ぎと仲良くしていたのだと知った時は流石に少しショックだったが、今まで仲良くしていたのに家の都合で不仲になるのも嫌だったし、性格上あまり気にしなかった。あっちもあっちで俺が立花なこと知ってて仲良くしてくれてたし。
語り出すと長いのでざっと説明すると、そのあとなんやかんやあって会えなくなり、今こうして再会したというわけだ。

さてそろそろ話を戻そう。
法雨という文字があった資料は梯が甲賀に攻撃してきたときのものだった。が、流石に詳しい内容については書かれていなかった。戦力把握のためにもこいつには話を聞いておきたい。

「里冉」
「んー?」
「俺さ、明日からやっと梯任務に関われんだよ」
「うん聞いてた。襲撃のときの話…聞きたいんでしょ?」
「流石。察しがいいな」
「でもその前に…」
「ん?」

里冉は俺に近づくと、突然思いっきり抱きしめてきた。…って、え?

「らっくん…会いたかった…この六年、君の事を忘れた日は無かった…」
「え、は?ちょ、りぜ…何やって…」
「うわーやっぱこの人あれやヤンホモってやつや」
「こらがく、そういうこと言わないのっ!」
「おい待て巻き込まれてる俺のこと考えてくれ」
「…やっぱ君たちがいると俺とらっくんの感動の再会が台無しだよ」
「俺巻き込まれたくない」
「ひどいっ!」
「ていうかこんなとこで立ち話もあれやしどうぞ中入って…」
「おいがくここ俺の家だから!つか勝手に甲賀の忍連れ込んだら俺班から外されるどころじゃ済まない!」
「えーやん楽は楽らしくいい下忍ライフを…」
「俺らしくって何!?ぜってぇやだ!」
「あの!こういうときに上の人たちに見つからずゆっくり話せる都合のいい場所、あるじゃないですか!」
「…あ!」
「せやな…!」
「?」